Archive for 1月, 2011

館長連載:私の美術漫歩第2回

第2回 ガラパゴス 太古の自然の美をそのままに

   

ガラパゴスをご存知だろうか。

南米エクアドルの沖合い1000キロメートルにある火山群島だ。

隔絶された孤島、独自の進化を遂げた動植物でいっぱいだ。1835年、ダーウィンがビーグル号で上陸。環境に応じて嘴や羽など様々に変化しているフィンチ(11-16cmの小鳥)を見つけて進化論を思いついた。ちなみに、ガラパゴスとは、スペイン語でゾウガメのこと。小錦みたいなのがゴロゴロいる。最近は、数も種類も減っているらしい。

1998年夏、エクアドル大使館から電話があった。ガラパゴス諸島バルボラ島、ヨットマン堀江謙一が通過した岬に、「キャプテン堀江岬」、その沖の小島に、「マーメイド島」という名前をつける。

堀江は1996年、缶ビールをリサイクルしたアルミの素材で船体を、ペットボトルの繊維で帆を作り、ソーラーボートでエクアドルの海岸都市グアヤキルをスタート、ガラパゴス諸島を通過して太平洋を横断した。

これほど環境に配慮した壮挙はない。今、ガラパゴスは環境汚染の危機にある。これを機に、島で命名式をやって、世界中に環境問題をアピールしたい、とのことであった。

そこで、私は、ヨットの正式名称は「マーメイド」ではない。「モルツマーメイド」である。従って、島の名称は、「モルツマーメイド」にするべきだ、と主張。

すると数日たって、するという。

こうなったら、行かないわけにはいかない。9月下旬、堀江謙一氏と遠々15時間かけて、エクアドルの首都キトへ飛んだ。エクアドルとは、スペイン語で赤道。赤道直下の都市、さぞかし暑いだろうと、軽装で真夜中の空港に舞い降りた。

ところが、寒い。

10℃。2850メートルの山の上。しかも気圧が高い。長旅を癒そうと、早速ホテルのバーへ。今、流行のハイボールを2杯、3杯。いや5-6杯。時差ぼけか、よく寝付けないまま翌朝。頭が痛い。疲労。二日酔い。高山病。風邪。必死の思いで、関係省庁、日本大使館など訪問、その後、グアヤキルへ。海抜0メートル、今度こそ暑いと思いきや、それ程でもない。15℃。フンボルト寒流が流れているという。

遂に完全にダウン。

下痢と吐きで七転八倒。

何度も一人で太平洋横断、世界一周も、東回りも西回りも無寄港で達成している9歳上の鉄人堀江氏は、これしきのことでと、哀れむような、蔑むような視線。

翌日、ガラパゴス諸島バルボラ島の空港。太平洋戦争の初期、日本軍は、ハワイの後、ガラパゴスを占拠、ここを基地にグアヤキルに攻め入り、太平洋に沿って北上、一挙にパナマ運河を落とすという、壮大な、いや荒唐無稽な作戦があったとのこと。その情報を知ったアメリカ軍が、そうさせてはならじ、と空港をつくった。ところが、飛行機が着陸しようとすると妙にすべる。アスファルトがあまりにも気持ちがよくて、膨大なイグアナとゾウガメが寝そべる、その油ですべるのだ。それ程、イグアナとゾウガメがいたのだ。

この話、いかにも作り話にみえるかもしれぬが、現地のガイド役がまことしやかに語ってくれた。

さて、キャプテン堀江岬の碑の除幕式の後、小船で、くだんのモルツマーメイド島へ。

あなたが最初の一歩を記しなさいというので、船から一歩飛んだ途端、汚い話、水のような液体がほとばしり出た。まるで、「洩ルツ哀ランド」。

夜、歓迎パーティ、島じゅうの名士が集った。どうにか、挨拶と乾杯の音頭をとったが、飲み食いはおろか、立っているのもやっと、の有様。参加者のうちの一人に医者がいた。診てやるという。スペインとインカのハーフ、メスチゾの威丈夫。一瞬迷ったが、背に腹は変えられない。尻に極太の注射をうって、水分補給は、気の抜けたコーラにレモンを絞ったものだけにして、早く寝ろという。その通りにしていたら、翌朝少しおさまった。

40数年、酒を欠かした日はない。「酒のない日は、太陽のない日」だ。その「ガラパゴスの一夜」だけが欠けた。後は、毎日、酩酊の船に乗っている。

ところで堀江さん、「絵とか彫刻とか、人間が作り出した美はあまり見ないけど、自然の造形の美は素晴らしい。一人ぼっちで海の上にいる時、海の広さ、深さ、近づいてくる魚の群れ、満天に輝く星。毎日、自然の美術館にいるようなものだ。とりわけ、ガラパゴスの美は、手づかずのまま。この美を汚してはならない。」

今、「ガラパゴス化」ということが言われている。世界標準とは関係なく、独自の進化を遂げた日本の携帯端末を揶揄して言うらしい。最近では、それを逆手にとって、新発売のスマートフォンに敢えて「ガラパゴス」と命名した、シャープのような企業もある。

ところで、練馬区立美術館、この立地、この規模を逆手にとって独自の進化(深化)を遂げたいものである。

他館の動向を見つつも、時にはメジャーに、時にはマニアックに、しかもクオリティ高く、独自性を発揮する。でないと生き延びていけない。

*     ちなみに

    キャプテン堀江岬(PUNTA  K. HORIE)と

    モルツマーメイド島(ISOLA  MARTS  MARMEID)は

  現在、海図に載っている。

あけましておめでとうございます

新年明けましておめでとうございます(少し遅くなってしまいましたが。。。)

練馬区立美術館では平成23年第1弾の展覧会として「没後40年-路傍の聖者-宮芳平展」を1月4日より開催中です(2月15日まで)。宮芳平は森鴎外の小説「天寵」の主人公にもなった画家で、教職を務めながら自然や人間を対象に主観的作品を描き続けました。

1月22日(土)、2月12日(土)の午後3時からは学芸員によるギャラリートークを行います。ギャラリートークの参加は申し込み不要ですので、皆さんのお越しをお待ちしております。(2月12日は手話通訳付です)

また、1月は練馬区内の小中学生の皆さんの作品を展示する展覧会が開催されます。

  • 練馬区中学校生徒作品展 平成23年1月15日(土曜)から1月19日(水曜)
  • 練馬区小学校連合図工展 平成23年1月22日(土曜)から1月27日(木曜) ※最終日は午後2時まで
  • 練馬区小中学校連合書き初め展 平成23年1月29日(土曜)・30日(日曜)
  • ねりまのじどうかん展 平成23年1月29日(土曜)・30日(日曜)

毎年ご家族皆さんで作品を見にきたり、ご自分の作品の前で記念撮影をするなどのほほえましい光景がみられるので、私たち職員も秘かに楽しみにしている時期です。

2月以降も魅力ある展覧会を開催予定ですので、今年も練馬区立美術館をよろしくお願いいたします。