Archive for 5月, 2011

暴かれた? どくとるマンボウ家の素顔

初夏の陽気を感じさせる5月21日、”PLATFORM2011展開催記念”として斎藤由香さんによる特別講演会「心とカラダの健康セミナー どくとるマンボウ家の素顔」を開催しました。

斎藤由香さんは自らをサントリー窓際OLと称し週刊新潮の連載コラムなど多方面で活躍されています。今回の公演では、祖父である歌人・斎藤茂吉さんや父・北杜夫さん、茂吉の妻である祖母・輝子さんなどご家族の話やサントリー社内の裏話(?)などたくさんのエピソードをお話し頂きました。

特に新潮文庫から発売中の斎藤由香さんの著書「猛女とよばれた淑女」で、その波乱万丈な人生を紹介している祖母・輝子さんの気高く豪快なエピソードの数々は驚かされるものばかりでした。79歳で南極に行った際の診断書のくだりは医者の息子さんを持つ方ならでは裏技が!詳しい内容はここでは紹介できませんが・・・(^_^;)

その他にも父・北杜夫さんの奇想天外な発想に巻き込まれたご家族の苦労話など、ジョークを交えながらも愛情あふれる口ぶりでお話ししてくれました。

    

後半は斎藤さんの勤務されている会社・サントリーに関する数々の裏話を披露していただきました。作家のご家庭に育った斎藤さんは銀行員のような堅い職業にあこがれていたそうです。しかし、縁あって入社した会社はそんな憧れとは程遠く・・・。

広報部時代のお話から健康食品事業部へ異動後のお話しまで、包み隠さずお話ししてくれました。

また、週刊新潮をご覧になった事がある方はご存知だと思いますが、コラムで斎藤さんはサントリー社内の話しを容赦なく取り上げています(実は当館館長も登場したことがあるとかないとか)。こんなことを書いて大丈夫なんだろうかと、心配してしまうところですが、ある日こんな会話が斎藤さんの耳に入ってきたそうです。

社長「(斎藤さんのコラムを読みながら)しかしこの会社はヒドイね。」

秘書「社長。それを書いているのはわが社の社員です・・・。」

社長「そうなのか!うちの会社も困ったもんだ。ワッハッハッ」

う~ん、さすが「やってみなはれ」の精神が息づく会社、懐の大きさを感じますね。

    

今回は”PLATFORM2011展開催記念”でしたので、講演会の前に展覧会をご覧になった方もたくさんいらっしゃいました。そんなPLATFORM2011 浜田涼・小林耕平・鮫島大輔-距離をはかる-展も5月29日(日)までと会期残り僅かです。皆様のお越しをお待ちしております!

トコトコと

5月14日(土)は浜田涼さんの展示室にて「トコトコ美術館」を開催しました。

3歳から6歳の子どもたちと保護者の方5組限定の鑑賞プログラムです。

美術館の展示室を楽しんでもらうことを目的としています。

今回のテーマは「もののかたち」

美術館の約束を聞いた後、まずは人のかたちを探しながら各自作品鑑賞。

人のかたちを発見したあとは、絵本で食べ物のかたちをみてみます。

今回読んだのは、こにしえいこさんの『まるくておいしいよ』です。

次は工作。

画用紙の表に好きな食べ物の絵を描いて、裏にはその食べ物のかたちに切りぬいた黒い画用紙を貼ります。

最後に自分の作ったカードでかたち当てゲームをして、

参加証を渡しておしまいです。

楽しんでもらえたかな。

来週は斉藤由香さんの講演会があります。

お楽しみに。

ひとつ目小僧のようなかわいらしさ

―キャッチフレーズ、ロゴ・マーク導入記念シンポジウム―

 4月の本欄でもお伝えしましたが、美術館では、キャッチフレーズロゴ・マークを導入し、入口・案内の看板やポスター・パンフレットなどに活用しています。

 この導入を記念したシンポジウム「キャッチフレーズ、ロゴ・マークのいま」を、5月13日に開催しました。キャッチフレーズの作成委員に参加いただいた古居利康さん、ロゴ・マークの選定委員に参加いただいた葛西薫さんとナガクラトモヒコさん、そして、公募したロゴ・マークの最優秀作品に選ばれた和久井遥さん(日本大学芸術学部大学院)をお迎えして行ったものです。

 見出しの言葉は、和久井さんの作品の印象を葛西さんが「ひとつ目小僧のようなかわいらしさが脳裏に焼き付いて忘れられなくなった」と語ったもの。葛西さんとナガクラさんには、ロゴ・マークを展開したつぎのようなキャラクターも提案していただいています。新たなミュージアムキャラ、グッズとして展開していきたいと考えています。

 キャッチフレーズ、ロゴ・マークの必要性について、古居さんは、「企業や組織は人がふえるほどさまざまな考えが出てくる。しっかりしたキャッチフレーズやロゴ・マークがあると、原点に立ち返って目標を失わずにすむ」と語っています。

 シンポジウムに参加した方からは、「普段、何気なく目にしているロゴ・マークも、その裏には作者の並々ならぬ努力と深い思いがあることを知った。これからは、興味深くいろいろなキャッチフレーズ、ロゴ・マークをみていきたい」という感想も聞かれました。

【パネラー紹介】

 葛西 薫(かさい かおる)氏

 1949年札幌生まれ。サントリーウーロン茶、ユナイテッドアローズなどの長期にわたる広告制作のほか、近作に、SUNTORY、サントリー美術館、六本木商店街の新CIのディレクション、TORAYACAFEの一連のグラフィックワーク、鹿島建設TORANOMONTOWERSのサイン計画などがある。1999年ADCグランプリ、1998年毎日デザイン賞、1999年講談社出版文化賞ブックデザイン賞など受賞。
葛西薫展(1992年、ggg/2007年、G8、G&G)実施。著書に、「葛西薫の仕事と周辺」(六耀社)など。

 ナガクラトモヒコ氏

 1956年東京生まれ。そごう・西武百貨店「夏市・冬市」の広告。RECRUIT、NTTDoCoMo「i-MODE」、NHK「からだであそぼ」、サントリー美術館などのロゴタイプデザイン。JAGDA年鑑、TCC年鑑、猪本典子著「修道院のレシピ」などのブックデザイン、福山雅治、内田有紀等のCDジャケットデザインと広告など。1990年日本グラフィックデザイナー協会新人賞、1992年、94年、96年朝日広告賞部門賞、2006年装幀コンクール「日本書籍出版協会理事長賞」など受賞。

 古居 利康(ふるい としやす)氏

 1957年生まれ。コピーライターとしてサントリー、大和ハウスグループ、キャノン、大和証券、BOSE AUTOMOTIVE、三菱地所、日進オイリオほかを担当。2002,05,06年毎日広告デザイン賞。2004,05,06年朝日広告賞。2007年消費者のための広告コンクール・経済産業大臣賞などを受賞。

パフォーマンス&トーク終了しました

5月7日土曜日は小林耕平さん×core of bellsのパフォーマンス、そして小林さんのギャラリートークが開催されました。

まず11:30~15:30はパフォーマンス。

前回4月23日はお客さんにもご協力いただき、図録テキストのような指令を用いたパフォーマンスが行われました。

そして今回は・・・

今回は「観ることで問いを生み出す装置の作成」目的のために問いを作り、問いに対する実践と発表、討議を行うというものでした。

時間が細かく設定され、より具体的に作品が作られていく過程を見ているかのようでした。

続いて16:00からのトーク。

一つのイメージを見せようとしたという初期作品から、「拡散していく方向」という新しい作品まで、小林さんの活動のいくつかの面を見せていただきました。

今回のパフォーマンスの中で何度も出てきた「装置」という言葉に関して、「同じ動作を再現するのではなく同じ状況をもう一度作ること」とお話されていたのが印象的でした。

また映像やペインティング、パフォーマンスとの関係性について再度考えてみたいキーワードがたくさん出てきました。

これからの小林さんの活動が更に楽しみになるトークだったと思います。

次の土曜14日は、3歳から6歳と保護者の方を対象とした「トコトコ美術館」開催です。

館長連載:私の美術漫歩第3回

第3回 「ジョルジュ・ラトゥール美術館」を訪ねて

今、私の手許にジョルジュ・ラトゥールの絵がある。

ラトゥールが描いた絵では勿論ない。ラトゥールを描いた絵だ。

「旅する絵師」とでも言ったらいいだろうか、太っちょの人なつこい表情をした男が肩から、腰周りから様々な絵道具をぶら下げて、飄々と歩く姿をセピア調のトーンでまとめあげている。

見ると「ワイズバッシュ 74/100」とある。現代ヨーロッパの具象絵画を代表する作家で、音楽家や馬の絵が多い。確か、サントリーホールにも「指揮者と演奏家」の絵が掲げられていた。

ラトゥールは、17C前半ルイ13世付き画家であったと言われている。残された作品は、ほぼ40点と少なく、その生涯も定かではない。長らく忘れ去られていたが、19C初頭に再認識された。画風には、風俗を描いたもの、聖書を題材にしたものと2系統ある。

2005年、国立西洋美術館で、「聖トマス」を入手したのを機に「ジョルジュ・ラトゥール展」が開催され、その光と闇、静けさと深さ、聖と俗の世界は、妖しげな魅力を発散し、見るもの全てを圧倒し好評を博した。(ちなみに日本には、東京富士美術館「煙草を吸う男」とあわせて2点のみある。)

そのラトゥールが、何故私の手許にあるか・・・・・?

   

2004年秋、フランス、アルザス・ロレーヌ地方モーゼル県ナンシー市を尋ねた。

11Cに開かれた町であるが、18Cロレーヌ公・スタニスラス1世(ルイ15世の義父)の時、発展した。ロココ様式あふれるスタニスラス広場は、世界遺産に登録されている。グランヴィルやエミール・ガレが生まれ育った町でもある。広場を離れると、アールヌーボーで彩られた建物をあちこちで見かける。

2008年開催の、「ガレとジャポニスム展」(サントリー美術館)のために、日本では未公開のガレの作品を借りようとの旅であった。ナンシー派美術館での交渉を終え、一息ついていると、ガイド役のガレ研究家フランソワ・ル・タコン氏が「まだある。」と言う。

「ここから車で2時間、ドイツ国境の村マイゼンタールの工房で、ガレは草創期を過ごした。当時のガレはナンシーから馬で1日がかりで通っていた。最初は華美な装飾はなく、透明ガラスでエナメル彩色、優美な色づかいでリズミカルで軽快なデザインのものが中心だった。」とのこと。そこへ行こうということになった。

人口800人の素朴な村の工房と美術館で歓待を受けた。ここも喜んで貸してくれるという。村のレストランで、ソーセージ、ハム、ジャガイモのアルザス料理、辛口の酸味の効いた白ワインを堪能して、タコン氏の車で一路ナンシーへ戻る。

ふと目覚めると小さな町の駐車場。ここを是非見て欲しいと案内されたのが

ジョルジュ・ラトゥール美術館。何でもナンシーまで30分残したヴィック・シュル・セイユという町らしい。ラトゥールはここで生まれ、ここの教会で洗礼を受け、その教会の前の18Cの邸宅を一新し美術館にしたとのこと。美術館をつくるにあたり、核となる「荒野の洗礼者、聖ヨハネ」を入手し、コローなどラトゥール以外の作品も展示されている。練馬区立美術館よりも一回り小振りの美術館だが、古い町に新しいたたずまいを見せている。ちなみに、その「聖ヨハネ」も2005年、西洋美術館を飾った。 

さてその夜、ナンシー、スタニスラス広場に面したレストラン。モーゼル県の文化局長、出版社のオーナー社長、ラトゥール美術館長、タコン氏とのディナー。

「2009年、モーゼル県あげてのガレ展をラトゥール美術館でやる。ガレは日本で大人気。名品の多くが日本にある。我々もサントリーに貸す。サントリーも名品を沢山貸して欲しい。それでないと、名実ともに大回顧展にならない。」とのこと。

その後、数度のやりとりを経て、お互いの貸し借りが成立。2008年の「ガレとジャポニスム展」開催時に、彼ら一行が視察にやってきた。今度は、こちらで日本料理とサントリーのビール、ワイン、ウイスキーでもてなした。

その時、土産に置いていったのが、くだんのワイズバッシュ(ナンシー生まれ)作「旅する絵師」。よくあるリトグラフの小品、最初は一瞥しただけで放っておいたが、額装して掲げると、どうしてどうして、思わず微笑みたくなるほど「味」がある。

2009年5月、ラトゥール美術館で開催された「エミール・ガレ展」。日本から、サントリー以外にも沢山のガレの作品が里帰りし、盛況だったとのこと。100年の時を経て、ガレの作品が日本で、フランスで一堂に会し、多くのファンの心をときめかす。まさに日仏文化交流の典型例ではないか。

ラトゥール、グランヴィル、ガレ、それにワイズバッシュ、ナンシーゆかりの作家たち。

グランヴィルの影響を受けたガレ、ガレの回顧展が開かれたラトゥール美術館、そのラトゥールを描いたワイズバッシュ。

その全てに、ほんの微かにからんだ私。不思議な縁(つながり)を感ずると言ったら、夜郎自大の牽強付会か・・・・・・・?

ところで、練馬区立美術館。

「ときめきの美 いま 練馬から」のキャッチフレーズ、ロゴ・マークも決まった。

みなさんのお力を借りながら、多くの「ときめき」を発信していきたいものだ。

    

  *次回は「音の宝石箱、サントリーホール誕生秘話」

   

練馬区立美術館サポーター通信「階(きざはし)」12号 、2011,4,1発行
より転載